妊娠中からむし歯予防
むし歯は細菌の感染によって引き起こされる感染症の一種です。
無菌状態で育てられた実験動物に、いくらお砂糖の入っている食べ物を与えても虫歯は出来ません。
これはどういったことを意味するでしょうか?
むし歯菌(う蝕原性菌=う蝕を引き起こす環境を作り出すことが出来る細菌)と考えられる細菌には主に2種類有ります。
Streptococcus mutans と lactobacillusです。
赤ちゃんは、無菌的な状態で生まれてきます。
生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中を調べて見ると、むし歯菌はひとつもありません。
では、どうして虫歯になってしまうのでしょう?
それは、特に生後19ヶ月~36(31)ヶ月の間( window of infectivity と呼ばれています )に、何かの機会に家族の誰か(主に、母親)から、赤ちゃんのお口の中にむし歯菌が感染してしまうからです。犬や猫などのペットからの感染も報告されています。
どうしたら、感染させずにすむのでしょうか?
残念なことに、現在は、まだ完全なるむし歯のワクチンは開発されていませんので、お母さんや、家族の方のお口の中の虫歯菌の数を減らすことから努力しましょう。
例えば母乳を与える時は、まず、手洗いして、乳首の回りを消毒してから、与えると思います。同じように、赤ちゃんと接する時は、良く歯磨きして、お口の中もきれいにしてから接してあげて下さい。当然、口で砕いて柔らかくした物を与えたり、食べ物を冷やすために母親のスプーンでフーフーしたりはやらないほうがいいです。
妊娠中こそむし歯のリスク検査のチャンス!?
生まれてくる赤ちゃんに対して、親がしてあげれる最高のプレゼントは何でしょうか?
個人の意見は多々あると思いますが、当院は、”むし歯のない健康な歯並び”と考えております。
では、どうしたら”むし歯のない健康な歯並び”ができるでしょうか?
まずは、むし歯にならない、なりにくい環境を整えてあげることが重要です。
そのためには、まず妊娠中からお母さん本人だけではなく、お父さん、おじいちゃん・おばあちゃん、ご家族全員が、むし歯の原因菌がどれくらいいるのか検査をすることが重要です。
そうすることで、家族内感染のリスクを知ることができ、むし歯菌が感染しにくいように対策をたてることができます。
予防プログラムを実行していない、虫歯の多いお母さんから生まれた赤ちゃんには、虫歯の発生率も高くなる傾向になってます。
できるだけ妊娠4ケ月から7ケ月までの安定期の間に、お母さん自身の歯科疾患の治療を済ましておきましょう。
もしくは、可能な限り治療を進め、出産後に治療をしましょう。
お子さんが生後19ヶ月~36ヶ月の間( window of infectivity)は、保育者がキシリトールのガム等を使うと良いです。
日本では、薬事法(日本国内で使える薬等を決めている法律)により、mutans 菌に効果的に働きかける薬が使えない現在では、定期的に100%キシリトール入りのガムを噛むことにより、有害なむし歯菌の質や数を減少させることもできます。
う蝕予防のためのその他の予防法も有効です。
お母さんだけでなく、お父さん、おじいちゃん、おばあちゃん等、お子さんに接する一人一人が、自分自身の口腔衛生管理を心掛け、虫歯のない健康なお子さんを育てて下さい。