歯内療法(歯の神経治療)とは
歯内療法とは、一般的に歯の神経を取る治療、歯の根っこの治療を指します。
皆さんは、歯の神経を取ることはどのようにお考えでしょうか?
実は歯の神経を取ると、その歯の寿命は半分以下になってしまうと言われているのです…
歯を残す大切さと方法
歯を失う原因と健康への影響
過去の報告から、歯を失う原因は、第1位が「むし歯」、第2位に「歯周病」と言われ、最近の調査では第1位が「歯周病」、第2位が「むし歯」であるとも言われています。
歯を失ってしまうと口腔の健康が損なわれることになり、やがて全身疾患を引き起こしてしまい、結果的に医療費の負担が増えることになってしまうおそれもあります。


「Keep28」を目指しましょう
口腔から全身の健康にもつながる大切な歯を、1本も失うこともなく生涯を過ごしていくことが大切です。
皆さんは「8020」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?「80歳になっても20本以上自分の歯を保とう」という運動です。
ですが本来、歯は28本に親知らずの4本を含めれば、最大32本あるのです。これでは「人生100年時代」と言われている中で、8本も失うことになってしまいます。
そこで目指したいのが「Keep28」というスローガンです。「Keep28」とは、一生涯1本も歯を抜かずに健康な状態で残すことを言います。
下記のデータをみると、日本の84歳以上の残存歯数が著しく低いことがうかがえます。
良質なメインテナンスで歯を失う予防を
ある臨床研究では、30年にわたり「成人でも97.7%歯を守れる」事実を証明しています。
しかし、良質なメインテナンスによってむし歯や歯周病は予防できても「歯根破折」により抜歯せざるをえない場合もあるのです。
歯内療法による歯根破折
歯根破折を起こす歯は、実はほとんどが歯内療法(神経の治療)を行った歯に起こりやすくなります。再治療を繰り返していくことで、健康な歯を削る量が多くなり、残っている歯の量が少なくなると、必然的に歯が折れてしまう確率が高くなり、歯を抜くことになると考えられています。
歯内療法をしないようにするのが大前提ですが、行うのであればできるだけ再治療を起こしにくい、質の良い治療をする必要があるのです。
質の良い歯内療法治療を
では、歯内療法治療をすること自体が絶対に歯を抜くことに繋がるのでしょうか?
歯内療法を行う際に質の低い歯内療法を行っていれば、残念ながら日本の現状は再治療の確率が高い状態なのです。
しかし、もし歯内療法治療が必要になった時に適切な質の高い歯内療法治療を行えば、再治療を必要とする確率がかなり低くすることができ、適正な補強、適正な補綴物(被せ物)、定期的なかみ合わせのチェックをすれば歯が折れることなく過ごしていただけることに繋がります。
良質なメインテナンスで歯を失う予防を
歯を失わないためにも、従来の何かあってからの歯科受診・再治療の繰り返し、予防という名の定期検診による早期発見・早期治療ではなく、当院で行っている「メディカルトリートメントモデル」によって、むし歯や歯周病の原因を除去し、様々なリスク管理・良質なメインテナンスを行うことで、できるだけ歯を失わないようにマネージメントし、ほとんどのむし歯や歯周病で歯を失うことを予防することが可能になると考えています。
日本の歯内療法の現状
現在の日本における歯科治療は、諸外国に比べて質の良い治療が、大半はできているとは言えない状況にあります。残念ながら、日本の現状では根管治療でさえ成功率50%以下と予想されています。
しかし、それには次のような理由があげられます。
日本の安価な歯科治療
日本は、歯科先進国と比べて格段に安価で治療することが可能です。
歯内療法においては、日本が1本約9,000円ほど(さらに保険診療患者負担分はもっと低い)で済むのに対し、例えばアメリカ合衆国ではおよそ10万円ほどかかってしまうのです。


健康保険制度による歯科治療
ではなぜ日本の歯科治療は安価におさまるのでしょうか?
その理由は、日本の歯科治療は「健康保険制度」による治療が可能だからです。
保険治療では「診療報酬の少なさ」「使用できる材料」「ルールによる制約」などによる限界があります。また、患者さんも多くが「健康保険制度」の金額設定に慣れてしまい、保険治療を望む場合が大半をしめているように思います。
いくら歯科医師が質の良い治療を実施したくても、現状のままでは赤字覚悟で診療することになってしまうのです。
そのため、その場しのぎの主訴解決にしかならず、結果的に歯を失うことにお金を使ったことになるのです。
考慮されない歯内療法治療の手間
さらにこの健康保険により、どんな歯科医院でも歯内療法治療を受けることができてしまいます。
歯内療法は歯科治療の中で最も時間と手間がかかる治療であるのに対し、健康保険における歯内療法治療では年々診療報酬まで下がっているのが現状です。
残念ながら、適正な診療をするための器具、薬剤、診療時間、その他のコストが考慮されていないのです。
安価な治療が可能なことによる弊害
保険治療によって安価に治療できてしまうことで、そもそも患者さん自身の歯や口腔内への価値観が向上しないという問題もおきてしまいます。
また日本とは逆に、歯科先進国の多くは自費治療になるため、なるべく治療しないで済むよう、メインテナンスへの意識が高いのです。
■根管治療(歯の根の治療)の比較
保険治療 | 保険外治療 | 保険外治療(専門医紹介) | |
---|---|---|---|
適応範囲 | hopeless(望みのない歯)でない全ての歯 | 初回の神経治療 不完全な根管治療のやり直し |
再発を繰り返す歯 器具破折がある歯 病巣が大きい歯 |
金額 | 保険適応内(数千円) | マイクロスコープによる無菌環境下での精密歯内療法 ①抜髄 前歯:33,000円(税込) 小臼歯:44,000円(税込) 大臼歯:55,000円(税込) ②感染根管処置 前歯:55,000円(税込) 小臼歯:66,000円(税込) 大臼歯:88,000円(税込) |
前歯:90,000円 小臼歯・大臼歯:120,000円 ※各医院にて異なる |
治療回数 | 多数 | 1回~3回 | 1回~3回 |
補綴物 | 保険or保険外 | 保険外 | 保険外 |
治療時間(1回) | 30分 | 60分〜90分 | 60分〜90分 ※各医院により異なる |
ラバーダム | 基本的に有り 場合により簡易防湿 |
必須+保険外封鎖材料 | ※各医院により異なる |
器具 | ほとんど滅菌済み器具使用(一部ディスポ製品) | 各個人専用器具もしくは使い捨て製品 | ※各医院により異なる |
薬剤 | 保険治療により規定された材料のみ | 制約なくベストな材料を自由に使用できる | ※各医院により異なる |
歯科用顕微鏡(マイクロスコープの有無) | 何か確認時のみ | ほとんどの処置で使用 | ※各医院により異なる |
歯を長く健康に保つために
自費治療によるメリット
患者さん自身の歯を生涯残すために、特に歯内療法においては自費による質の良い治療が大切であることがお分かりできたかと思います。
そうすることで、質の良い治療における「基本コンセプトの厳守」が可能になってくるのです。
では、質の良い治療において何が大切になってくるでしょうか?テクニック?経験?
ラバーダム防湿をして無菌的に処置をするなどの基本コンセプトの厳守が大事になってきます。
当院では、基本コンセプトの厳守もさることながら、先進的な医療機器、スキルの習得、治療時間の確保にも力を入れております。根管治療が必要な方は是非ご相談ください。